不気味なE型肝炎 これだけは知らないとヤバイ 日刊ゲンダイ 平成17年3月30日号 鵜沼 直雄 杏雲堂病院肝臓科顧問
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不気味なE型肝炎 これだけは知らないとヤバイ 症例の調査結果が初公表 昨年末「ブタの内臓を食べてE型肝炎に感染し、死亡した」というニュースが世間を賑わした。 “肝炎にE型もあるのか!”と驚いた人も多いだろう。 C型などに比べ感染者が少ないことから、これまでは断片的な情報しか伝わってこなかったE型肝炎だが、先日、長期間の症例を集めた初の調査結果が厚労省から発表された。 E型肝炎から身を守るために、押さえておかなければならないことは何か? 調査結果をもとに、杏雲堂病院肝臓科・鵜沼直雄顧問に聞いた。 「肉は必ず火を通して食べる」が唯一の予防法厚労省調査は1979年以降に感染した193の症例を集めたものだ。全国で32人が重症化し、そのうち12人が死亡した。 感染源については「ブタなどの肉や内臓を食べて感染した例が目立つが、全体の60%以上は不明」だという。「報告されているのは生、または生焼けのブタのレバー、イノシシやシカの肉です。馬刺しや牛レバー、牛肉のユッケなどについては報告がない。しかし、E型肝炎ウイルルスは日本にいないと考えられていたのが、最近になってようやく日本にも存在するということが分かってきたレベルです。ブタ、イノシシ、シカはもちろんですが、牛や鳥、馬なども、必ずよく火を通すべきです。E型肝炎に関してはワクチンなどがないので、予防法は“肉の生や生焼けは食べない”しかありません」 E型肝炎ウイルスは63度以上の温度で30分以上加熱すれば死滅する。家庭用コンロの場合、最大加熱で1分間テフロン製フライパンを熱すると、約180度まで上がるといわれている。肉を食べるときは、家庭でも焼き肉屋でも、肉の中まで色が変わって完全に火が通った状態を目安にしよう。発症者の平均年齢は51歳193の症例のうち、「91%が30代以上で平均年齢は51歳」だった。このことから言えるのは、“感染の可能性がある場合、30代以上はほんの少しでも体調の変化があったら、放置してはいけない”ということだ。 「E型肝炎の潜伏期間は短い人で2週間、長い人で9週間、平均では6週間です。発症すると、最初は“体がだるい”“食欲がない”といった程度です。このまま自然に症状が消える人もいますが、黄疸(おうだん)が出て2、3日でみるみる症状が悪化し、意識障害などを起こし死ぬケースもある。その判別は検査をしないと分からないので、体のだるさなどがあればすぐに専門医の検査を受けるべきです」 肝炎の検査は、A・B・C型の可能性からチェックしていく。E型に関しては、“症例の少ない肝炎だから”と検査が後回し、あるいは医療機関によっては行わない場合もある。念のため「E型肝炎も調べてください」と患者側から言うこと。 発症リスクに男女差なし 調査結果では「男性154人、女性39人と、圧倒的に男性が多い」が、発症リスクに男女差はないという。「肉の内臓などを生で食べる機会が男性に多いといったことが、男性に圧倒的に多いという結果になったのだと思う。しかし、男女差はないので、どちらも注意が必要です」 発症は“東高西低” 「E型肝炎の発症が東日本、中でも北海道に多いのは事実です。昨年起きたE型肝炎の集団感染(1人死亡)も北海道でした。E型肝炎ウイルスには1〜4型があり、重症化しやすい4型が北海道など東日本に多く、比較的重症化しにくい3型が西日本に多いというのが、理由のひとつとして考えられます」 4型が西日本にも広まっていく可能性はあるが、とにかく東日本、中でも北海道では意識して肉の生、生焼けを食べないようにすること。 まだまだ判明していないことが多いE型肝炎だからこそ、「念には念を」でいくしかないのだ。 |