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C型肝炎 〜不安を除き、正しい知識と有効な治療を〜 地元の先生が教える・・・・・病気と治療 Medical Pivot 取材先 鵜沼直雄肝臓科顧問 佐々木研究所付属杏雲堂病院 TEL 03-3292-2051 FAX 3292-3376 〒101-0062東京都千代田区神田駿河台1-8 |
「C型肝炎は怖い。20〜30年で肝硬変になり肝癌になる」 こういうお話を耳にすることがあるかも知れません。とくにC型肝炎の方は、それなら何時、癌になるかも知れないと不安に感じることでしょう。 しかし、正しい知識を持つと、必要以上の不安はなくなります。しかも、どんどん新しい有効な治療法が出て来ておりますので、これから良くなる人が増えてくることでしょう。 ●HCV(+)でもC型肝炎ではない場合がある 健診などで、C型肝炎の検査というとHCV抗体をまずしらべます。それが陽性だと一応C型肝炎ではないかと考えるのですが、中にはその抗体が陽性でもC型ウイルスのいない場合があるのです。ですからその抗体が陽性の場合は必ずHCVRNAの血液検査もいたします。それが陽性ならはじめてC型ということができます。それが陰性ならたとえその抗体が陽性でもウイルスはおりません。心配はいらないのです。 ●C型でも肝機能の正常な人は余分な心配はいらない 血液生化学が全く正常、血小板数も正常、超音波も正常であればインターフェロンなどの特別な治療は不要です。しかし数ケ月に一回は検査を受けておくと良いでしょう。もし数値が高くなれば、その時は治療を考えます。20年以上も肝臓が正常のままで、八十歳以上にもなって、お元気で何の異常もないC型肝炎の方が多数、私の外来に通っておられます。 ●肝硬変かどうかは血小板数で分る 肝臓が悪いと、一般にGOT(AST)やGPT(ALT)などの値が高いので、治療をいたします。のみ薬も注射薬もあります。また日常の生活も大切で、無理せず、栄養をとるなどの注意もあります。 しかし、大きな目で肝炎の進み方を見るには血小板数が大切です。 血小板数が正常で17万もあれば、現在、慢性肝炎といってもごく初期で軽く、肝硬変になるとしてもこれから20年か30年後、と推測されます。ですから、例えば60才の慢性肝炎の人で血小板数が正常なら、その方が肝硬変になるとしても80才か90才ごろなのだということが分ります。 血小板数が10万以下に減少していれば、一応、肝硬変ではないかと考えます。そして超音波などの検査を行い、どの程度の重さなのかを確かめます。 ●肝硬変にならないために 慢性肝炎から肝硬変にならないためにどうすれば良いか。それは何といっても原因ウイルスを除去することです。 C型肝炎ウイルスを除去するためにはインターフェロンが用いられます。しかし、従来の、インターフェロンのみの治療法では、ウイルスの完全除去は10%程度でした。10人に1人位だったのです。最近、インターフェロンにリバビリンを加えて行われておりますが、それによりますとウイルス除去は20%程度に上ります。 さらに、来年あたりには新しいペグインターフェロンが登場します。それによりますとウイルス完全除去は45%とはね上り、有効性は極めて高くなります。しかも週1回の注射で良く、副作用もその分少なくなります。 ●肝癌にならないために 慢性肝炎でC型ウイルスが消えてしまうと将来の癌の発生は5分の1に減少します。しかも、ウイルスがたとえ消えなくても、インターフェロンにより肝の血液検査が正常になると、やはり癌の発生は5分の1程度に減少します。 もし、インターフェロンが使われなかった場合でも、肝の血液検査の値をできるだけ正常に保つような治療を行えば癌の発生はおさえられるということになります。 ●癌になる前に直す 癌が出てから癌を直すのではありません。定期的に3〜4ケ月に1回ずつ超音波検査を行い、さらに必要に応じてCT、MRIを行い、少しでも疑いがあれば、癌になる前にラジオ波などで完全に消滅させてしまうのです。先手を打って直すのです。これによって将来の不安はなくなることになります。 |
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杏雲堂病院 顧問 鵜沼直雄 東京大学第二内科を経てアメリカ留学。昭和49年三井記念病院消化器センター内科部長。東京大学講師。平成5年三井記念病院副院長。日本肝臓学会終身専門医、指導医。日本消化器病学会終身専門医、指導医。 著書:肝臓病−これで安心(小学館)ほか、NHKテレビ出演多数 |