(9月2日) 肺がん@ |
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40歳を超えたら検診を定期的に受けよう
自己チェック表は肺がんの危険因子。YESが多いほど肺がんになるリスクが高いので、禁煙と生活改害が必要である。
肺疾患の専門医、佐々木研究所付属杏雲堂病院(東京都千代田区)の林永信・副院長兼呼吸器科部長がいう。「肺がんの最大の危険因子は喫煙です。喫煙者は非喫煙者に比べて、肺がんによる死亡率が男生で4・45倍、女性で2・34倍にのぼり、さらに1日25本以上たばこを吸う人は肺がんで7倍、喉頭がんで90倍ものリスクがあります」。
現在、肺がんによる死亡者は年間5万人を突破し、がんの中で発生率では男性2位、女性5位、死亡率では男性1位、女性3位。つまり、肺がんは年々増加していて、他のがんに比べて死亡率も高い。
「肺がんが増加している要因として@喫煙者の増加A生活環境の汚染B社会の高齢化などがあげられます。他のがんに比べて死亡率が高い理由として@早期発見がしにくいことA早期に転移しやすいことB種類が複雑で治療の効きが悪いことなどがあ げられます」(林副院長)。
肺がんの患者は男佐に多く、加齢とともに増加する。年齢別の発生頻度は40歳を境に急増し、50代は40代の5倍強、60代以上は40代の20倍弱となる(厚労省の人口動態統計をもとに計算した)。つまり、肺がんにかかるリスクは40歳から高くなり、60歳からピークに達する(自己チェック表の項目1、2)。しかし、加齢は避けることができないので、リスクの高くなる40歳をこえたら、肺がん検診を定期的に受けることが大切である。
喫煙の影響をみる尺度として喫煙指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)がある。
1日20本ずつ20年吸い続けると喫煙指数は400となり、1日30本ずつ20年吸い続けると喫煙指数は600となる(自己チェック表の3、4)。喫煙指数が400をこえると肺がんのハイリスクグループに入り、600をこえると扁平上皮がん(肺がんの一種)にかかりやすいといわれている。非喫煙者でも、喫煙者のそばでタバコの煙を吸入していると(間接喫煙、受動喫煙)、やはり肺がんのリスクが高くなる(項目5)。したがって、タバコの害を防くにはみんなで禁煙するしかない。
「細胞を傷つけ、がんの発生に関係しているといれている活性酸素の害を防ぐため、抗酸化作用のあるβカロチン、ビタミンC・Eなどを含む食物(緑黄色野菜など)を十分にとることも大切です」 (林副院長)。
<特別取材班>
<自己チェック表>
1 |
40歳以上の男性である。 |
YES |
NO |
2 |
60歳以上である。 |
YES |
NO |
3 |
20年以上タバコを吸っている。 |
YES |
NO |
4 |
1日の喫煙本数×喫煙年数=400以上。 |
YES |
NO |
5 |
いつもタバコを吸う人のそばにいる。 |
YES |
NO |
6 |
大気汚染(車の排ガス)がひどい地域に住んでいる。 |
YES |
NO |
7 |
野菜(特に緑黄色野菜)はあまり食べない。 |
YES |
NO |
8 |
家族に肺がん患者がいる。 |
YES |
NO |
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(9月3日) 肺がんA |
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長引くせき、血たん⇒早期検査を
自己チェック表は肺がんの主な症状。YESがある場合、呼吸器科で肺がんの検査を受けよう。
呼吸器疾患の専門医、佐々木研究所付属杏雲堂病院(東京都千代田区)の林永信副院長兼呼吸器科部長がいう。
「肺がんは大きく分けると腺がん、扁平上皮がん、小細胞がん、大細胞がんの4種類あります。太い気管から1〜2回枝分かれした気管支までの部分を肺門部、その先の細い気管支から肺胞を含む部分を肺野部といいますが、一般に肺門部にできるがんは症状が出やすく、肺野部にできるがんは症状が出にくいのです」
肺がんにおける割合は腺がん50%、扁平上皮がん30%、小細胞がん10〜15%、大細胞がん5〜10%で、腺がんは肺野部に、扁平上皮がんは肺門部にできやすい。
肺がんの半数を占める腺がんは、かなり進行してからでないと症状を自覚できない。
「肺がんの主要な症状はせきと血タンです。せきはしつこいほど長く続きます。血タンはタンにわずかに血が混じる程度です。タンは進行とともに増加します。気管支炎や肺炎を合併しやすくなり、合併すると発熱、胸痛、呼吸困難などが出現します」(林副院長)。
さらに進行すると、息切れしやすくなったり、声がかすれてきたり、胸痛・背部痛が生じたりすることもある。せきが長く続くようなら、早めに肺がんの検査を受けたほうが良い。
肺がんの検査には、@胸部レントゲン検査Aタンの検査=容器にタンを3日間ため、がん細胞の有無を調べるB胸部CT検査C気管支鏡検査=局所麻酔や静脈麻酔をかけ、直径5_くらいの気管支鏡をのどから入れて肺内の病巣から組織を採取し、病理検査を行うDCTガイド下針生検=画面ではっきり分からない小さな影の場合、CTで見ながら、胸壁に細い針を刺して病巣から組織を採取し、病理検査を行う・・・の5種類がある。
「治療は肺がんの種類、部位、進行度などによって異なりますが、早期がんの場合、まず病巣を切除し、次に化学療法や免疫療法によって細胞単位で転移している可能性のあるがんの治療を行います。免疫療法というのは薬を使ってからだの免疫力を高める治療です」(林副院長)。
早期がんなら、80%が治癒する。しかし、肺がん全体で切除できるのは半数にすぎず、半数が進行していて切除できず、肺がん全体の冶癒率を下げている。早期発見が何よりも大切である。
<特別取材班>
<自己チェック表>
1 |
せきが長く続いている。 |
YES |
NO |
2 |
とくに喫煙時にせき込む。 |
YES |
NO |
3 |
タンに血が混じる。 |
YES |
NO |
4 |
口の中に血がついていた。 |
YES |
NO |
5 |
かぜをひくと重症になりやすい。発熱、胸痛、 呼吸困難などが生じ、黄色〜緑色のタンが出る。 |
YES |
NO |
6 |
息切れしやすくなった。 |
YES |
NO |
7 |
声がかすれてきた。 |
YES |
NO |
8 |
胸痛、背部痛みがある。 |
YES |
NO |
9 |
呼吸がゼーゼーして息苦しい。 |
YES |
NO |
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(9月4日) 自然気胸 |
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やせて背が高く若い男性に多い症例
自己チェック表は自然気胸の症状(項目1〜6)と危険因子(項目7〜8)。項目1〜2の一つがYESで、項目3〜6及び項目7〜8にYESが一つ以上ある場合、自然気胸の可能性があるので、呼吸器科で検査を受けよう。とくに項目4がYESの場合重症の自然気胸(緊張性気胸)が疑われ
るので、急いで受診する必要がある。
呼吸器疾患の専門医、佐々木研究所付属杏雲堂病院(東京都千代田区)林永信・副院長兼呼吸器科部長がいう。「気胸は何らかの原因で胸腔(胸膜腔)に空気が流入した状態で、そのため肺が縮小し、呼吸に支障をきたし、息苦しくなります。気胸はさまざまな原因でおこりますが、肺に発生したのう胞(空気がたまった袋状の病変ブラという)が破裂しておこるのが自然気胸です」
胸椎、肋骨、胸骨とそれらをつなぐ筋肉組織によって鳥カゴのような胸郭が形成されており、底辺には横隔膜によって閉鎖されている。その胸郭と横隔膜に囲まれたスペースが胸腔で、肺はその中に固定されている。胸郭と横隔膜の内面と肺の表面はそれぞれ胸膜におおわれている(壁側胸膜、臓側胸膜)。2枚の胸膜は肺が円滑に伸縮できるよう、ぴったり接している。ただし、肺自体には膨張する機能がなく、代わりに胸腔が陰圧になっており、肺を膨張させるように働いている。胸腔、すなわち2枚の胸膜の間に空気が流入すると、胸腔が陽圧になり、流入した空気の分だけ肺が縮小してしまうのである。「自然気胸はブラの破裂によって発症しますが、ブラがどうして発生するのかはまだ不明です。気胸の中で最も頼度が高く、やせて背の高い、若い男性に多いのが特徴です」 (林副院長)。
自然気胸が発症すると突然胸痛がおこり、せきが出て、息苦しくなる。漏れた空気の量により、呼吸困難や胸部苦悶感が出現することもある。「治療は肺の虚脱(縮小)の程度によって異なります。虚脱度1度(肺の上端が鎖骨より上)の場合は安静、経過観察も可能ですが、それ以上の場合は注射針や細い菅を入れて胸腔内の空気を抜き、肺を再膨張させる治療が必要になります」(林副院長)。
空気漏れがやまない例、再膨張不良例、再発例などは手術が必要になる。最近は胸腔鏡という内視鏡とテレビモニターを用いて行う手術が主流で、体の負担も軽く、短期間の入院ですむという。
<特別取材班>
<自己チェック表>
1 |
運動時、急に胸が痛くなり、息苦しくなった。 |
YES |
NO |
2 |
激しくせき込み、突然に胸痛と息切れが生じた。 |
YES |
NO |
3 |
息を十分に吸えない感じがして息苦しい。 |
YES |
NO |
4 |
呼吸困難がどんどん強くなっていく。 |
YES |
NO |
5 |
乾いたせきが出て、とまらない。タンは出ない |
YES |
NO |
6 |
しばらくすると胸痛がが軽くなり、消失した。 |
YES |
NO |
7 |
10〜20代の男性である。 |
YES |
NO |
8 |
長身でスマートである。 |
YES |
NO |
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